経営とビジネスの現場で、日本人の「思考」と「行動」に変化を起こす!「マネジメント実務」に変化を起こす!

コラム

情報量が多く期待できる「OPEN質問」

世界で活躍する日本人リーダーの現場行動
~思考と行動をアップグレードする~

第50回
日本人は外国人社員と仕事をするとき、仕事のやり方、進め方を教えなければいけないと感じ、「伝える」行動を一所懸命とります。一方で外国人の気持ちや悩み、日本人の視野にない新しいアイデアや意見などを知り、理解するためには、「聞く」行動も大切です。ところが、日本人の「質問」には特異な傾向があるため、本来の「聞く」目的が十分達成できていないことが多いのです。

◆2種類の質問
1.相手の質問に「はい、いいえ」で答えられる「YES・NO質問」
 例えば、「○○しましたか?」「○○できますか?」「○○すべきだと思いますか?」 などです。これらの質問に対する相手の答えは「はい(YES)」か「いいえ(NO)」となるので、会話は質問と答えで完結してしまいます。このような「YES・NO質問」は通常、「事実確認」や「意思確認」を目的に使われますが、実際の職場でのコミュニケーションでは、相手を「確認後に伝えたいこと」に誘導する目的で使われることが多いのが実態です。
2.相手の質問に「はい、いいえ」で答えられない「OPEN質問」
 一方、相手が「はい(YES)」や「いいえ(NO)」で答えることのできない質問の仕方に、「OPEN質問」があります。この質問には2種類の質問があります。
①答えが短くなる質問
例えば、「○○したのは誰ですか?」「○○が起きた場所はどこですか?」「○○を伝えたのはいつですか?」などです。英語では、「Who」「Where」「When」で始まる質問です。このような質問は相手に、「はい(YES)」か「いいえ(NO)」よりも「具体的な事実」が伴う答えを要求する質問です。しかし会話が質問と答えで完結する特性を持つため、質問の目的という点では、「YES・NO質問」と同じといえます。日本人が使う「質問」のほとんどは、「YES・NO質問」か「OPEN質問①」です。
②答えが長くなる質問
 では、どのような質問をすると、外国人をより正しく理解できるのでしょうか。
例えば、「○○は何ですか?」「どのように○○しますか?」「○○についてもう少し話してくれますか?」などです。英語では、「What」「How」「Please tell me about」で始まる質問です。このような質問に対しては、相手は自分の考えや意見を説明しなければならないので、答えは自ずと長くなり、情報量も多くなります。つまりこうした質問は、相手をより正しく知るチャンスを広げることになるのです。
 さらに、「○○したのはなぜですか?」「どうして○○したのですか?」という質問もあります。英語では、「Why」で始まる質問です。これは日常的に比較的使われがちな質問なので、相手の考えや意見を知ることができるかもしれません。しかし頻繁に使うと、相手が無意識のうちに守りの姿勢をとり、結果として、敵対的な雰囲気が出来る可能性があります。場合によっては、「なぜ(=Why)」で始まる質問が連発され、「たたみかける質問」になってしまう可能性もあるのです。
「“なぜなぜ質問”は3回以上繰り返しなさい」と教育される日本人は多いですが、本来これは、他人に対してとる行動ではなく、自分の思考を深めるために、自分に対してとる行動なのです。この質問の多くは「What」や「Please tell me about」で始まる質問に置き換えることが可能なので、対話を冷静に進行させるためには、「なぜ(=Why)」で始まる質問をあまり多用しない方がよいでしょう。

◆「書く」「見る」「使う」ことにより「OPEN質問②」を身につける
 日本では学校教育の影響で、「OPEN質問②」の質問習慣を身につけている日本人が大変少ないです。そのため一般的な日本人は、「OPEN質問②」を受けることも慣れていません。予期せぬタイミングでこの質問を受けると、答えに窮し、しどろもどろになることさえあります。しかし、外国人は幼少の頃からこの質問に答えることで、自分の考えや意見を論理的に表現することに慣れています。そのため外国人は、誘導的な質問が大変多い会話には違和感を抱いてしまうのです。
日本人が「OPEN質問②」のような慣れない質問を、自分の表現習慣に取り込む秘訣は、特定の場面をイメージし、その場面で使えそうな質問例をまず自分のノートやファイルに「書く」ことです。そして、書き出した質問例をできるだけ高い頻度で「見る」、そして実際に実験的に「使う」ことです。
外国人の考えを正しく理解し、目線を合わせた対等な関係で仕事をするためには、日本人は「OPEN質問②」に慣れ、「質問力」を高める必要があるのです。

コメントは受け付けていません。

top