経営とビジネスの現場で、日本人の「思考」と「行動」に変化を起こす!「マネジメント実務」に変化を起こす!

コラム

「さぼり」を「自責」で解決する!

世界で活躍する日本人リーダーの現場行動

~思考と行動をアップグレードする~

第5回

「さぼり」を「自責」で解決する!

 

“いたちごっご”の「さぼり」と「取り締まり」

 

①   営業マンが顧客を訪問していない!?

在中国日系企業の日本人総経理から、「うちの中国人営業マンは営業で外出していると思っていたのですが、どうやら顧客を訪問していないようなんです・・・何かいい管理方法はありませんか?」という類の相談を時々受けます。日系某社での事の発端は、営業マンに提出を義務づけている日報では顧客を訪問していることになっているが、実際は、訪問していないことが後で判明したとのことです。

ある日、顧客の日本人総経理に用事があり電話した際に、「いつもうちの営業マンがお世話になっております。先週も御社の○○さん(現地人)のお時間を頂いたようでありがとうございました。ところで・・・」と話し始めた時、その後の言葉が遮られ、「えっ?そうなんですか?うちの○○からはちょうど先ほど、御社の営業マンは過去2ヶ月全く訪問がないという報告を受けたばかりなのですが・・・」とのこと。おかしいな?と思い、他の親しい顧客数社の日本人総経理に用事を“作り”電話で聞いてみると、やはり、日報にある訪問事実がないことがいくつか判明したようです。そこで、当の営業マンを呼び出して問いただしてみると、日報内容に虚偽があったことを認めたとのこと。本人は多くの言い訳をしていたが反省した様子もあったので、その時は厳重注意にとどめたものの、残念ながらその後の行動改善はあまりなかったようです。このようなことで時々顧客に電話確認するのはマネジメントの恥をさらすことになるし、だからといって、この営業マンが担当する全ての顧客を自分が訪問するわけにもいかず、冒頭の相談をすることにしたという経緯でした。

②   ネットショップで購入した品物が会社にたくさん届く!

特に中国の若者は毎月の給料のほとんどを消費活動に充当しますが、その中でもネットショッピングの比重は高いようです。特に内勤の間接部門では、勤務時間中にショッピングモールにアクセスして物品を購入するだけでなく、共働きの夫婦や独身者は配送先を会社に指定することも多いのです。そのことについて日本人マネジメントから注意を受けると、ネットで購入したのは休憩時間であり、不在のため自宅では引き取れないので会社を配送先にしたとのこと。日本のマンションのように宅配ボックスが一般的に普及していない事情を考えるとこの理由は理解の範囲ですが、どうやら実際は、勤務中にネットショッピングに励んでいる社員が随分いるようです。この事実は、興味深いことに、ネットショッピング会社が受注した「時間」のデータで裏付けられています。

では、企業ではどのような方法で勤務中のネットショッピングを牽制しているのでしょうか?多くの日系企業では、日本人マネジメントがオフィス内を歩く際に、アクセスしているサイトを社員の背中越しに覗いたり、IT部門の責任者にサイトを監視させ定期的に報告させるという「取り締まり」方法を採用しているケースが多いようです。

③   無断遅刻が多い!

多くの海外諸国では、人はそもそも時間に対してさほど厳格ではありませんので、会議の開始時間や待ち合わせ時間に遅れることは日本よりも多いです。ただ、一般的に時間に厳格な日本人と一緒に仕事をする限り、遅れそうな場合は上司や関係者の携帯電話に連絡を入れるという最低限のビジネスマナーを身につけることは必要でしょう。

しかし、特に中国やアジア諸国では、誰にも連絡なく数時間平気で遅れる人、上司の日本人が出張する度に遅れたり、半日無断欠勤する人がいるのも現実です。

このような場合、日本人マネジメントは事実を確認するために、“ターゲット”社員の周辺社員に聞き取りをはじめるだけでなく、他の信頼できる社員にこの“ターゲット”社員の日常的な行動を細かく監視するよう要請することさえあります。

また、ある日系某社では、コストの高い日本人駐在員の若手が毎朝30分早く出社し、正面玄関の前で遅刻者のチェックを続け、その結果を毎週、表とグラフでまとめて上司に報告しているというケースもありますが、これは費用対効果がかなり低い仕事と言わざるをえません。

遅刻も「さぼり」の一種ですが、「さぼり」の「取り締まり」に時間とコストをかけるのは後ろ向きの行動であり、企業活動上、必ずしも得策とはいえません。

「さぼり」が起きる本質的な理由と根本的な解決策

現地社員が「さぼる」一番の原因は仕事が少なく「ヒマ」なことです。そして、さぼり社員の多くは、「向上心」「やる気」を失い、仕事から心が離れていきます。評価や報酬に大きな不満がある場合は、すでに転職活動をしているケースすらあります。いずれにせよ、結果的に周囲に迷惑や悪影響を与えることになってしまいます。

当然のことですが、さぼり社員本人の行動に問題があることは否定できません。しかし、このような社員が増えてくると、マネジメントは「自責」のスタンスで問題解決にあたる必要があります。

「さぼり」を少なくするためには、「取り締まり」という後ろ向きの行動を強化し続けるよりも、まず「忙しい」状態を作ることが重要です。そして、達成させる成果を明確にし、成果を上げないと評価・報酬、さらには、雇用にも影響が出ることを明確に伝えなければいけません。「やる気」の出る状態や健全なマネジメント体制に向けてアクセルを踏むことが必要なのです。

このプロセスにおいては、少々の「さぼり」には眼をつぶり、正面から取り合わないことが大切です。その一方でマネジメントは、「できる」社員を称賛し、「できる」社員の予備軍をやる気にさせ、前進するグループの人数を増やしていくような作戦をとるべきです。評価は「印象」や「情」ではなく「事実」に基づいて適切に行い、①引き留めたい社員②成長の見込みが期待できる社員③成長の見込みがない社員を見極め、組織の中にほど良い緊張感を作っていくことに専心する必要があります。さらに、会社の発展の「絵」を描き、社員の市場価値を高める教育施策を求心力にすることができれば、「さぼり」問題は自然消滅していくことでしょう。

「就社」傾向の強い日本人は「会社の認知度」に安心感を抱きがちですが、現地社員は「自分の職の確保」「昇進機会」「市場価値の向上機会」を強く求めています。

現地社員のニーズに焦点をあて、彼らに前を向かせるマネジメントを実行することによって職場に活力を創っていくことが、「さぼり」を解決する本質的な対策といえます。

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