コラム
世界で活躍する日本人リーダーの現場行動
~思考と行動をアップグレードする~
第5回
「さぼり」を「自責」で解決する!
“いたちごっご”の「さぼり」と「取り締まり」
① 営業マンが顧客を訪問していない!?
在中国日系企業の日本人総経理から、「うちの中国人営業マンは営業で外出していると思っていたのですが、どうやら顧客を訪問していないようなんです・・・何かいい管理方法はありませんか?」という類の相談を時々受けます。日系某社での事の発端は、営業マンに提出を義務づけている日報では顧客を訪問していることになっているが、実際は、訪問していないことが後で判明したとのことです。
ある日、顧客の日本人総経理に用事があり電話した際に、「いつもうちの営業マンがお世話になっております。先週も御社の○○さん(現地人)のお時間を頂いたようでありがとうございました。ところで・・・」と話し始めた時、その後の言葉が遮られ、「えっ?そうなんですか?うちの○○からはちょうど先ほど、御社の営業マンは過去2ヶ月全く訪問がないという報告を受けたばかりなのですが・・・」とのこと。おかしいな?と思い、他の親しい顧客数社の日本人総経理に用事を“作り”電話で聞いてみると、やはり、日報にある訪問事実がないことがいくつか判明したようです。そこで、当の営業マンを呼び出して問いただしてみると、日報内容に虚偽があったことを認めたとのこと。本人は多くの言い訳をしていたが反省した様子もあったので、その時は厳重注意にとどめたものの、残念ながらその後の行動改善はあまりなかったようです。このようなことで時々顧客に電話確認するのはマネジメントの恥をさらすことになるし、だからといって、この営業マンが担当する全ての顧客を自分が訪問するわけにもいかず、冒頭の相談をすることにしたという経緯でした。
② ネットショップで購入した品物が会社にたくさん届く!
特に中国の若者は毎月の給料のほとんどを消費活動に充当しますが、その中でもネットショッピングの比重は高いようです。特に内勤の間接部門では、勤務時間中にショッピングモールにアクセスして物品を購入するだけでなく、共働きの夫婦や独身者は配送先を会社に指定することも多いのです。そのことについて日本人マネジメントから注意を受けると、ネットで購入したのは休憩時間であり、不在のため自宅では引き取れないので会社を配送先にしたとのこと。日本のマンションのように宅配ボックスが一般的に普及していない事情を考えるとこの理由は理解の範囲ですが、どうやら実際は、勤務中にネットショッピングに励んでいる社員が随分いるようです。この事実は、興味深いことに、ネットショッピング会社が受注した「時間」のデータで裏付けられています。
では、企業ではどのような方法で勤務中のネットショッピングを牽制しているのでしょうか?多くの日系企業では、日本人マネジメントがオフィス内を歩く際に、アクセスしているサイトを社員の背中越しに覗いたり、IT部門の責任者にサイトを監視させ定期的に報告させるという「取り締まり」方法を採用しているケースが多いようです。
③ 無断遅刻が多い!
多くの海外諸国では、人はそもそも時間に対してさほど厳格ではありませんので、会議の開始時間や待ち合わせ時間に遅れることは日本よりも多いです。ただ、一般的に時間に厳格な日本人と一緒に仕事をする限り、遅れそうな場合は上司や関係者の携帯電話に連絡を入れるという最低限のビジネスマナーを身につけることは必要でしょう。
しかし、特に中国やアジア諸国では、誰にも連絡なく数時間平気で遅れる人、上司の日本人が出張する度に遅れたり、半日無断欠勤する人がいるのも現実です。
このような場合、日本人マネジメントは事実を確認するために、“ターゲット”社員の周辺社員に聞き取りをはじめるだけでなく、他の信頼できる社員にこの“ターゲット”社員の日常的な行動を細かく監視するよう要請することさえあります。
また、ある日系某社では、コストの高い日本人駐在員の若手が毎朝30分早く出社し、正面玄関の前で遅刻者のチェックを続け、その結果を毎週、表とグラフでまとめて上司に報告しているというケースもありますが、これは費用対効果がかなり低い仕事と言わざるをえません。
遅刻も「さぼり」の一種ですが、「さぼり」の「取り締まり」に時間とコストをかけるのは後ろ向きの行動であり、企業活動上、必ずしも得策とはいえません。
「さぼり」が起きる本質的な理由と根本的な解決策
現地社員が「さぼる」一番の原因は仕事が少なく「ヒマ」なことです。そして、さぼり社員の多くは、「向上心」「やる気」を失い、仕事から心が離れていきます。評価や報酬に大きな不満がある場合は、すでに転職活動をしているケースすらあります。いずれにせよ、結果的に周囲に迷惑や悪影響を与えることになってしまいます。
当然のことですが、さぼり社員本人の行動に問題があることは否定できません。しかし、このような社員が増えてくると、マネジメントは「自責」のスタンスで問題解決にあたる必要があります。
「さぼり」を少なくするためには、「取り締まり」という後ろ向きの行動を強化し続けるよりも、まず「忙しい」状態を作ることが重要です。そして、達成させる成果を明確にし、成果を上げないと評価・報酬、さらには、雇用にも影響が出ることを明確に伝えなければいけません。「やる気」の出る状態や健全なマネジメント体制に向けてアクセルを踏むことが必要なのです。
このプロセスにおいては、少々の「さぼり」には眼をつぶり、正面から取り合わないことが大切です。その一方でマネジメントは、「できる」社員を称賛し、「できる」社員の予備軍をやる気にさせ、前進するグループの人数を増やしていくような作戦をとるべきです。評価は「印象」や「情」ではなく「事実」に基づいて適切に行い、①引き留めたい社員②成長の見込みが期待できる社員③成長の見込みがない社員を見極め、組織の中にほど良い緊張感を作っていくことに専心する必要があります。さらに、会社の発展の「絵」を描き、社員の市場価値を高める教育施策を求心力にすることができれば、「さぼり」問題は自然消滅していくことでしょう。
「就社」傾向の強い日本人は「会社の認知度」に安心感を抱きがちですが、現地社員は「自分の職の確保」「昇進機会」「市場価値の向上機会」を強く求めています。
現地社員のニーズに焦点をあて、彼らに前を向かせるマネジメントを実行することによって職場に活力を創っていくことが、「さぼり」を解決する本質的な対策といえます。
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本コラムの著作権は株式会社J&G HRアドバイザリーに帰属し、当該法人の事前の書面による許諾なく、複写、転載、転記等をすることを固くお断りいたします。
世界で活躍する日本人リーダーの現場行動
~思考と行動をアップグレードする~
第4回
「中傷」を「自責」で解決する!
組織の中の「中傷」は厄介
日本人でも外国人でも人を中傷することはありますが、人の悪口や陰口をいう行動は基本的に人間の性なので、このような行動を完全に消滅させることは至難の技です。ただ、このような行動が組織の中で数多く起きて続くことはよくありません。組織の中で人を中傷する行動が広がる原因としては、会社や組織の体制や不公平な評価に対する不満、モチベーションの低下、そして、仕事量の多さ少なさから生まれる不安、などが代表的です。これ以外にも、個人的な妬みやっかみ、興味本位、あるいは、政治的な駆け引きという高度なことも原因となりえます。
中傷の現象は、組織の中で人の中傷を発信する人(=扇動する人)がいて、それに乗る人(=加担する人)がいて、お互いに心の「傷」を共有し癒し合っていることなのです。しかし、この行動からは前向きな解決策が生まれることはまずありません。むしろ、組織の中にマイナスのエネルギーが溜まり、働く人の心が荒廃していくだけなのです。
むなしい努力・・・
組織の中で中傷が発覚するころにはすでに発信元(=扇動した人)がわかりにくくなっています。なぜなら、加担している人たちの心や行動がヒートアップし、場合によっては過激になり、結果的に発信元の初期の「温度」をはるかに上回っていることが多いからです。
このような状況になってからマネジメントが注意しようとしても、そのメッセージの対象となるターゲットは既に広く分散しているため、メッセージの効力は薄れてしまいます。あるいは、今ごろ気づいても遅いのでは?という具合に“見えない”心理的な逆襲を受けるだけでしょう。
また、マネジメントが真剣に“犯人”探しをすることもありますが、これも効力があまりありません。なぜなら、その時点では、“真犯人”の姿は薄れ、便乗した“犯人たち”で溢れているからです。結果、聞き込み調査で数多くの社員を“逮捕”せざるをえなくなり、“逮捕”の現実味が薄れてしまうのです。仮に、便乗した“犯人たち”が一致団結して真犯人を差し出したとしても、共犯を認めることになりますし、後日、真犯人を中心とするグループから仕返しを受けることさえあるでしょう。まさに、イタチごっこなのです。
そこで登場するのが、社内メールの監視です。これは「阻止」という点では一定度の効果はありますが、逆に、会社に対する警戒心や不信感などを社員に植えつけることになり、あまり健全ではありません。社内メールを監視し、中傷を一時的に阻止できたとしても、プライベートメールでの行為まで阻止することは難しいです。携帯メールも一般化している現在では、完全に中傷を阻止する方法はないと考えるのが妥当でしょう。
自責のマネジメントで事前の打ち手を!
「できる」リーダーは“火(=中傷)消し”だけに奔走せず、“火”が起きるそもそもの原因を解決するための行動をとります。いうのは簡単ですが、実際のところ、目の前で“火”を見たとき、人間の性や感情が障害となり、人はなかなか当たり前の行動がとれないものです。組織の中には、火に油を注ぐ人がいる場合すらあるのです。
リーダーが考えるべきことは、「なぜ、組織の中でこのような負のエネルギーや負のネットワークが蔓延しているのか?」に対する答えです。この自問自答は大変勇気ある行動といえます。なぜなら、自責を視野に入れた行動だからです。日本人でも外国人でも「できる」リーダーは自責の行動プロセスの中で答えを導きだし、その答えをもとに、組織的に事前の問題解決に取り組む行動習慣をもっているのです。中傷を生む3つの根本原因についてお話しましょう。
【原因1】 仕事が面白くない!
組織の求心力が低下している可能性が高いです。具体的には、組織の方向性やゴールが不明確なため、ひとりひとりの役割まで不明確になり、自分の仕事に意義、やりがいを感じない社員が増えていきます。一方で本来、社員を鼓舞して率先すべき各層のリーダーまでが行き先を見失い元気を失うことすらあります。この問題解決は、まず、リーダーからしっかりと方向感を打ち出し、メンバーと対話することが絶対条件となります。下が仕事に面白みを感じないのは上の行動に問題があると考えるのが適切なのです。現場の社員から、やってみたい!実現したい!頑張ります!という明るい「生の声」を聞くことができるような状態を創ることがリーダーの役割です。
【原因2】不満が多い!
どんな組織でも人が働いている限り不満はあります。不満が多くなりすぎると人の心は乱れ、「傷」の共有が始まるのです。その前に不満の「程度」を察知し手を打つことが重要です。人は、他人に自分の不満を話すとある程度スッキリするという、案外単純な心理特性を持ち備えています。不満の対象次第では、他人に話した後、自分で解決する行動をとることができる人もいますが、組織的なことに関する不満の場合は、その場で話して気持ちはスッキリしても根本的に不満を解消することができるわけではありません。従って、「不満をいえる場」「不満を聞く人」「不満を解決する方法」が必要になります。これら3つのことをいかにタイムリーに用意できるかどうかがリーダーの腕の見せ所です。
【原因3】仕事がヒマ!
私の現場経験上では、この原因が中傷という行動に繋がっている確率が最も高いと考えています。メールや直接会話をとおして人を中傷している人たちの多くは「ヒマな人」です。しかし、これは個人の問題として片づけることはできません。ヒマな状態をつくっているのはマネジメントだからです。仕事が減ると人は仕事をしているフリをしながら徐々に不要な仕事をつくりはじめます。あるいは、他人の仕事に浸食し始め、重複する仕事が増え、お互いにいがみあったり、正当化しあったりする行動が増えます。本質的には、自分の居場所を見失うことから様々な不安を抱き、気がつけば他人を攻撃して自分を守ろうという行動をとることになるのです。
特に、日本企業の海外拠点では、マネジメントに対する不信感や評価結果に対する不満はさることながら、日本人が現地人材の能力を見限ってしまうことにより仕事を抱えすぎてしまうこともよくあります。その結果、現地人材がヒマになり、「職」を失いたくないという心理が働き、お互いの足を引っ張り合うような行動をとることはよくあることなのです。
国内外を問わず、社員ひとりひとりが目的や目標に向かって本当に忙しく働いている職場では、人を中傷するような行動は起きない、ということをリーダーは肝に据え、自責型のマネジメントをしていくことが大切です。
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世界で活躍する日本人リーダーの現場行動
~思考と行動をアップグレードする~
会議の「場」をマネジメントする!
「形」よりも「内容」を重視する行動を習慣化させる
一般的な日本人は会議の場に参加者が「開始」から「終了」まで“居る”という「形」を重視しがちです。そのため、遅れてくる人、途中退席する人には「形」を壊す人、自分勝手な人という印象を持つことになります。しかし、多くの外国人は、このような「形」よりも会議の場での「内容」をより重視します。具体的には、会議の主催者が、会議の目的やその場のゴールを達成することができ、一方で、参加者は「貢献できた」「スッキリした」「勉強になった」といったように会議の時間を自分にとって価値ある時間として感じることができることが大切なのです。外国人をマネージし彼らにリスペクトされ成果を一緒に達成していくためには、「形」にこだわり過ぎず、「内容」を重視する行動にシフトし、会議の質を高めることが重要です。今月は主催者がアップグレードしなければいけない5つの行動についてお話します。
1.会議の「種類」を決める
会議の種類には大きく分けて3つあります。会議を開催する際には、どの種類の会議なのかをはっきりさせることが大切です。
① 共有=業績の現状や結果、プロジェクトの進捗状況、連絡事項、決定事項などが対象です。
② 議論=特定の問題や課題、会社や事業部門の方向性、方針、戦略、戦術、活動などが対象です。
③ ブレインストーミング(結論を出すことを目的とせず、アイデアや考えを自由に出し合う)=特定のテーマや課題が対象です。
2.「必要な人」を選ぶ
会議の種類それぞれにおいて、都度、「必要な人」に参加を求めることが参加意識を高めることになります。終身雇用のもとで「会社のため」という大義名分が組織の中で浸透している日本企業では、できるだけ多くの人に声をかけておこう、平等に機会を与えておこう、という考え方で参加を求めることがよく見受けられます。しかし、この考え方は海外ではなかなか理解されにくいのです。海外の現地社員は日本と異なる(家庭および学校での)教育、雇用慣行、社会システムの中で、「自分のため」「自分の仕事のため」という意識をベースとした思考・行動を身につけています。従って、会議の主催者は、都度、会議の種類と目的に相応しい「必要な人」を選んで参加を依頼し、会議の場では参加者に対して参加意識と貢献を最大化することを求めることが大切になるのです。
3.会議の開催について「動的に」発信する
主催者は参加予定者に対して、参加意識を高めるよう働きかける必要があります。できればアシスタントに任せるのではなく、自らメールなどで発信する方が「顔」が見えるコミュニケーションになるので効果的です。その際には、会議の種類や目的、アジェンダ(=議題)や議論のテーマ、スケジュールはもちろんのこと、関係者が集まって直接的に共有、確認、議論することの意味や副次的に期待している効果などについても、自分の言葉でわかりやすく表現することが大切です。また、会議でより多くの貢献を求めるために、宿題を与えて事前に準備させ、会議の前に主催者に提出させるというような工夫も効果的でしょう。主催者は、会議の質を高め、参加者の時間を大切にするためにも、「静的」な事務連絡だけではなく、「動的」な発信と働きかけで参加者の参加意識を高めることが大切なのです。
4.冒頭で会議の「ゴール」を説明し、最後に「ゴール」の達成度合いを確認する
主催者は会議を始めるときにまず、参加者に対してその会議のゴールを説明する行動を習慣化させることが大切です。「この会議が終わるときには、○○と○○が決まっていること」「○○の問題解決の結論が出ていること」「参加者全員が議題についてお互いにフランクに質問し、明確に確認し合えてスッキリしている状態ができていること」などです。このようなゴールについては、白板に書くか、摸造紙に書いて壁に貼るか、パワーポイントでスライドを用意して投影しておくことがお勧めです。会話が少し横道にそれ、コミュニケーションが混乱したときに、参加者全員が最初に説明を受けたゴールを「目」で容易に再確認することができるようにしておくことがポイントなのです。ゴールが書かれた紙を配布することも悪くはありませんが、視覚的効果や意識の焦点化効果は薄れてしまいます。さらに、会議の終了時には、主催者は最初に提示し説明したゴールが達成できたかどうかを参加者ひとりひとりに確認することが大切です。参加者にひと言ずつ話してもらうとなおベターでしょう。必ずしも毎回ゴールが完璧に達成できるとは限りませんが、主催者は一喜一憂する必要はありません。主催者が毎回、会議の始まりと終わりにこのような行動をとることで、主催者も参加者も程よい緊張感と時間の大切さを再認識することができ、その結果、会議の内容が徐々に充実していくことになるのです。
5.会議終了時に次回に繋げる「まとめ」をする
会議の終了時にはもうひとつ大切な行動があります。それは、次回に繋げる「まとめ」を行なうことです。情報の共有を目的とした会議であっても、その中で問題や課題が確認されることがあります。その場で議論することも可能ですが、時間切れになった場合は、主催者はその問題や課題を放置してはいけません。次回の会議のアジェンダにするのか、特定の参加者だけに関わることなので個別の会議にするのか、などを判断しなければいけません。議論を目的とした会議であれば、未決定事項についての議論を次回にきちんと持ち越すことができるように、決まったこと、決まらなかったことをその場で明確に整理することが必要です。至急事項であれば、次回を待たず臨時会議を開催する判断をしなければいけません。このような「まとめ」をする行動は会議に「締まり」を持たせ、会議の「内容」に「継続性」を持たせる上でとても大切なのです。この「まとめ」の中で、次回のアジェンダやスケジュールを明確にし、必要に応じて次回までに参加者が準備する内容を明確にすれば、参加者の「頭と心」にも「連続性」を持たせることができるようになるのです。
会議の場をマネジメントするということは、会議の開始から終了までの時間だけをマネージするのではなく、会議の「前」と「後」の時間も含めてマネージすることなのです。このような5つの行動を自分の中に取り入れると、「形」だけでなく「内容」も重視する行動が習慣化し、結果的に、会議の質が高まっていくのです。
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世界で活躍する日本人リーダーの現場行動
~思考と行動をアップグレードする~
「時間感覚」を世界仕様にアップグレードする!
ボヤキをなくすための2つの行動
外国人が多数の海外では、日本人として身についている特有の行動習慣の上に、海外で求められる行動習慣をアドオン(=追加)し、それを積み上げながら自分の行動をアップグレードしていくことが大切です。そして、日本人環境と多文化環境に応じて自分の中の行動習慣のスイッチを切り替えて使い分けることができるようになれば、どんな国でもストレスレスに(=ストレス少なく)仕事と生活ができるようになります。
さて、「時間」に関わるイライラを解消するためには、日本人は次の2つの行動を身につけることにチャレンジした方がよいでしょう。ひとつは、時間に関わる許容範囲を広げること。もうひとつは、「形」よりも「内容」をより重視する行動です。今月はひとつ目を来月はふたつ目についてお話します。
時間に関わる許容範囲を広げる
1. プライベートでは約30分が目安
外国人にホームパーティーに誘われ、19:00からと言われたら、19:00-19:30に着くように行動するという判断が適切なのです。20代の頃、典型的な日本人で日本人特有の行動習慣しかなかった私が19:00前にきちんと到着すると、まだ誰ひとり来ていないどころか、ホストもまだ準備中で、「先に遠慮せず飲んでいてね」と温かい言葉をかけてもらった経験があります。プロトコール(=儀礼)上は招待された時間の前ではなく後に行った方が良いということを後で知ったのです。もちろん、30分以上遅く来て早く帰る人もいれば、ホストの迷惑も考えず、夜中まで飲んだくれている人もいます。少なくとも案内された時間に皆が一斉に集まり一斉に帰る、というケースはとても少ないといえます。
ホテルのロビーで複数の外国人と食事の待ち合わせをしても、時間通りに皆がきちんと集まることは稀です。遅れてくる人を待っている間、雑談でワイワイガヤガヤし、どのお店に行くか、何を食べるか、あるいは近況などを話し合っているケースが多いでしょう。20分くらいたっても来ない人がいれば、行き先の電話番号やグループの誰かの携帯番号を遅れている人の携帯電話や部屋にメッセージで入れるというような行動をとります。ポイントは、遅れてくる人を真剣に批判し、眉間にしわを寄せて怖い顔になっている人はほとんどいないことです。
ただ、稀ですが、外国人でも時間に厳格な人や、性格的にとてもせっかちな人もいますので、相手が外国人だからといって時間感覚をいつも緩めるのではなく、相手を見て状況判断するというフレキシビリティーも必要でしょう。
2. 職場では10分から15分が目安
会議の開始時間が10:00と伝えても、遅れてくる外国人は絶えません。英語圏なら”from 10:00 at sharp(=10:00きっかり)”と言えば、少し緊張感が高まりますが、”from 10:00”ですと、”around 10:00(=10:00ごろ)”と勝手に解釈する人が多いのが事実です。アジアなどの非英語圏ですと、英語の”at sharp”も、日本語の”きっかり“”ちょうどに“も、そのニュアンスがなかなかうまく伝わりませんし、当該国の言葉でこのような意味の言葉すらない、あるいは、あっても日常的にほとんど使わない、というケースも多いのです。
日本においても多文化環境での会議はありますし、海外では周囲に外国人の数が多い環境での会議が間違いなく増えます。このような環境での会議に外国人であろうと日本人であろうと遅れてくる人がいた場合、私は次の行動をとりながら待つことをアドバイスしています。もちろん、日本人同士の会議の場合は、日本社会での「時間を守らない人は信用が低い」という固定観念を優先してよいと思います。
① 各参加者が雑談を楽しむ
日本人が主催する会議は全員が集まるとすぐに本題に入る傾向が強いです。しかし、多文化環境の会議では、主催者が本題に入る前に上手く「準備の時間」を作ります。なぜなら、異質な人たちが集まっているので融合を試みる必要があるからです。会議となると国籍を問わず誰でも多少の緊張感を持ちます。人によってはかなり緊張します。ですから、少しでも話しやすい雰囲気を作り、心の準備のための時間を作ることが大切なのです。マネジャー会議や部門長会議ですと、日ごろなかなかお互いに話す時間を持つことができない人たちが集まっていることが多いです。このような場合、主催者が参加者の一人の仕事をネタにジョークを飛ばしたり、自分の最近の体験話をすることにより、雑談が始まる「きっかけ」を作ることが大切です。ポイントは、笑いやリラックスをとおして脳が活動し始めるスイッチが入るように導くことです。このような「準備の時間」を「待つ時間」に充てればよいのです。
② アイスブレークゲームをする
会議の場では緊張がつきものです。場の空気が凍りついていることもあります。このような空気の中では質の高い会議はできません。従って、主催者はアイスブレーク(=「氷」を「砕く」という意
味)のゲームも自分のネタとして持っておくことが大切です。私の場合、数十種類のネタがありますが、時と場合によって使い分けています。会議の導入になるようなことを楽しくやれば人を待つ時間はそれほど気にならず、しかも、遅れた人が来るころには他の参加者の脳はすっかり動き始めていますので、スムーズに会議の本題にシフトすることができるのです。遅れた人は「準備の時間」には参加できませんが、いつもと違う和やかな雰囲気の中で、自己責任として自分の脳を素早く会議モードに切り替えなければいけません。
③ 遅れてくる人の罰ゲームを皆で考える
日本企業で働く外国人に少しでも「時間を守る」ことの大切さを感じてもらうのと同時に、会議の本題に入る前の準備時間としても有効です。罰ゲームですから時間に遅れたことに対するペナルティーです。しかし、本気にペナルティーを科すのは良くありません。例えば、「15秒踊りながら歌ってもらおう!」などのように、あくまでも皆が笑い飛ばせる程度のものがベターです。案外、意外な人からいろんな面白いアイデアが出てきて盛り上がります。通貨価値にもよりますが、100円程度の罰金を科して、3ヵ月に1回くらいの頻度で罰金箱に溜まったお金を原資に会議中にお菓子を出すというのも面白いアイデアのひとつです。遅れてきた人を笑いで迎えるだけでなく、その時点では他の参加者はすでにウオームアップが終わっているというような時間の使い方は日本人の行動習慣にはあまりないので、学ぶ余地が多いと思います。
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世界で活躍する日本人リーダーの現場行動
~思考と行動をアップグレードする~
「時間を大切にする」とは時間を守ること?
時間に厳格な日本人
日本の社会では、「時間を守らない人は信用が低い」という固定観念があります。従って、日本人の間ではプライベートでも仕事でも、他人と約束した時間を守るという行動習慣が定着しています。約束に遅れそうになると、信用を失いたくない意識が働き、必ず相手に連絡を入れお詫びをします。皆が時間を守るから自分も時間を守る、自分が時間を守るから皆にも時間を守らせるという好循環により、時間を守る行動は社会的に定着しているともいえます。
日本の交通機関もしかりです。電車の運行スケジュールの正確性は世界一でしょう。飛行機も他国に比べると遅れはとても少ないです。私がANAに勤務していたときは、定刻より20分を超えて出発を遅らせると、当該便の出発責任者は遅延報告書を提出しなければなりませんでした。そのため、定刻+20分以内に出発させるためのオペレーションプロセスが徹底的に繰り返し改善されることになります。さらに、電車も飛行機も遅れが発生した場合は、必ず乗客に対してお詫びのアナウンスがあります。海外ではまずあり得ないことです。
また、今は少なくなったかもしれませんが、会社の寮で門限を守らないと会社からの信用を失う、家の門限を守らないと親からの信用を失う、といった具合に、世代を問わず、公私共に時間を守ることを徹底的に教育されてきたのが日本人です。
海外ではどうでしょうか? 企業努力として時間を守らせるケースはあると思いますが、そもそも、日本と同じような時間に関わる社会的固定観念はないといっても過言ではありません。交通機関が時間に正確でないことはもとより、家庭でも親が子供に対して時間を守ることの大切さを優先して教育しているわけでもありません。
外国人は会議に遅れる
国内の外国人は少数派なので、数の論理で日本人の行動に自らを適合させている人もいますが、海外では外国人の行動習慣が日常的にそのまま顕在化します。日本人マネジメントが主催する会議の開始時間になっても出席すべき外国人社員がいないと、まず、日本人は本能的に「けしからん!」と感じます。そう感じる具体的な理由は、「この人はルーズだ」「この人は自分勝手だ」「この人は信用に欠ける」ということになります。
次に、開始時間を過ぎると会議室にいる日本人の表情が徐々に固くなり、強張り、眉間にしわが寄り始め、イライラが始まります。その理由は、自分たちにとって当たり前でないことが目の前で起きつつあるからです。そして、ほとんどのケースでは、遅れてきた外国人を強面で睨み、きつい言葉で叱ることになります。その結果、その場の雰囲気がものすごく凍りついてしまいます。さらに、遅れた人が理由を質問されて答えだすとイライラが絶頂に達し、「それはいいわけだ、いいわけはいらない! 謝ればいい!」という具合です。遅れた側は「聞かれたから答えただけなのに……」「それなりの理由があったから仕方ないのに……」となります。その後しばらくは、待っていた人たちだけでなく、遅れてきた人も脳の働きが停止してしまうことになり、事実上、空白の時間がしばらく流れることになります。これでは、会議の質に影響が出てしまいます。
外国人には日本的な忠告は効果が低い
個人差はありますが、そもそも外国人が日本人のように時間に遅れることに対して罪悪感を抱くことは大変少ないのが実態でしょう。始業時間、会議の開始時間、待ち合わせ時間などあらゆる場面においてそういえると思います。日本と違って、時間に正確な交通機関が一般的ではない海外では、交通渋滞は統制不能要因であり、いくらでもいいわけの材料になり得ます。このようないいわけに対して日本的に忠告するとすれば、「日本では雪や台風の日は電車が遅れることがある。そのようなとき、日本人なら、目的地までの所要時間を長めに見積もり、いつもより早く出発する」「車の場合、時間帯によって渋滞が予測できるなら、いつもより早く出ればよい」「時間に遅れないということが大切なのだ!」ということになります。しかし、この忠告はあまり効果がありません。交通事情に加え、そもそも民族性や気候が行動習慣に影響を与えている海外では、外国人が多数派であることから数の論理も働き、残念ながら日本流の「正確な」時間感覚に従えることは難しいのです。
外国人にとっては「形」よりも「内容」が大切
背景に言語的な問題が潜んでいるのは事実ですが、多くの外国人は、日本人は「形」にこだわり過ぎて「内容」を軽視する傾向があると感じています。「会議の始まりの時間には厳しいけど、なぜ会議の内容にはこだわらないのだろう?」という疑問があるのです。日本人は「時間を守る」ことに厳しいが「時間を大切にする」という感覚が薄いと受け止められているのです。彼らにとって「時間を大切にする」とは共有するお互いの時間を有意義なものにするという意味です。たとえば、「お互いが理解し合えてよかった」「お互いが次にやるべきことがはっきりしてよかった」と感じられる時間にすることを意味しています。
会議の中で、意見を求められ発言しても、賛成されるのでも反対されるのでもなければ、彼らにとって意見をいう意味がありません。最初から日本人マネジメントの間で結論が決まっていて、形式的にただ意見を言わされるのもフェアーではありません。また、予定していた会議の終わりの時間になり、何が決まったのかが不明なまま終えてしまうと、それこそ、消化不良となり有意義な時間にはなりません。さらに、その場では何も決まらず、その後、会議の再開の案内もなく、気がつくと、日本人マネジャーの間だけで結論が出されていた、ということになれば最悪です。実際のところ、案外このようなことは海外の現場だけでなく、本社を中心としたクロスカントリーの電話会議、テレビ会議でも起きているのです。
一方で、会議が予定どおり始まったものの、盛り沢山であったため、予定の時間に終えることができず、終わりの時間がズルズルと伸びると、彼らは「日本人は始まりの時間には厳しいのに、終わりの時間には甘い」と感じます。終わりの時間が過ぎて次の予定があるため途中退席しようとすると、「まだ終わっていないのになぜ退席するのか!」と日本人も外国人も叱られてしまうケースがあります。この場合、お家芸の「時間を守る」ことにも疑問符をつけられてしまうことになるのです。
来月号では、外国人と接する中で日本人が感じる「時間」に関わるイライラを解消するための行動についてお話します。
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