経営とビジネスの現場で、日本人の「思考」と「行動」に変化を起こす!「マネジメント実務」に変化を起こす!

コラム

納期に関わる「不安」 -”時間”-

世界で活躍する日本人リーダーの現場行動

~思考と行動をアップグレードする~

第7回

納期に関わる「不安」 -”時間”- 

 

 国籍を問わず、さまざまな関係の中で起き得る

「中国人は、ベトナム人は、タイ人は、インドネシア人は・・・・納期を守らない!」という日本人マネジメントの不満や愚痴をよく聞きます。対象となる国にも限りがありません。ただ、話しが進むにつれて、「そういえば、日本本社でも納期を守らない日本人はいるね・・・」「いや、海外拠点の日本人駐在員の中にもいるいる!」「でも、程度問題かもしれないけど、中国人の方が納期を守らない人が多いと思うけど・・・」という具合です。

国籍を問わず人と人が仕事をしている限り、納期を守らないという現象は起きますし、上司、部下の関係に限らず、部門間、社外の協力会社との間など様々な関係の中で起き得ることです。

納期は「時間」だけでなく、「品質」とセットになっている!

「納期を守る」という言葉には、通常、言外に「(期待している)品質を(きちんと)伴って」ということが条件として含まれています。単に約束した期限を守ればよい、ということではないことがポイントです。約束した期限に提出しても品質が伴っていなければ、「なんだ、これは!?」「指示したことと違うじゃないか!?」という批判を受けることになります。一方で、仕事の品質に気を取られて期限を守ることができないと、「遅い!」「途中段階でもまずは約束した日に現状を報告すべきだ!?」という批判を受けることになってしまいます。

なぜ、納期を守れないのか?

では、なぜ、人は納期を守らない、という行動をとってしまうのでしょうか?国籍を問わず、上司、部下の関係をイメージして、原因の解説を進めますが、上司、部下以外のあらゆる関係においても当てはめることができます。

そもそも、部下が仕事に対するやる気を失っていたり、無断遅刻、突然の音信不通、さぼりなどの不自然な行動を頻繁にとっている場合は、仕事を依頼しても納期を守らない確率が当然高まります。このような場合は、起きている問題をまず先に解決し、平常の状態に早く戻すことが最優先となります。

ここでは、メンタル的に平常の状態であるにもかかわらず、納期を守ることができない原因に焦点を当てることにします。結論からいえば、納期を守ることができない原因は、部下側に「不安がある」からです。人間は誰でも依頼された内容に不安を感じると、立ち止まってしまい、行動を起こすことを躊躇します。そして、時間が経つにつれて自分の中で優先順位が下がり、やがて意識する頻度が少なくなり、ふと気づいた時は、納期の直前だった、あるいは、納期が過ぎていた、という状態に無意識のうちに自分を導いてしまうものなのです。

ビジネスの現場での「不安」には大きく分けて通常、2種類あります。ひとつは、時間に関わる「不安」で、もうひとつは、品質に関わる「不安」です。部下に納期を守らせるためには、上司は部下が抱えがちなこの2つの「不安」を取り除くための行動をとることが重要になるのです。

時間に関わる「不安」

①   負荷

日本と同じく海外でも、“できる”現地社員には社内の競争原理が働き、仕事が集中してしまう傾向があり、結果、時間に関わる不安を抱かせてしまうことが多く見受けられます。海外では役職の役割が基本的に明確なので、一定度を超えて仕事が集中すると、「役割以上の仕事」と受け止められ、想定外の給与交渉、昇進交渉にも発展しかねませんので、仕事の依頼し過ぎには注意が必要です。

日本では、上司と部下、社員と社員の間の役割が曖昧なので、“できる”社員はどうしても慢性的に高負荷状態になってしまう傾向があります。しかし、“できる”社員は、やり遂げるための時間に不安があっても、そこを頑張ってやりきってこそ、“できる”と評価されることを期待して頑張ります。つまり、自分の頑張りで自分の不安を打ち消しているのです。従って、上司は結果的に、“できる”部下に助けられているといえます。

ただ、極度に負荷が偏りキャパを超えてしまうと、「どこまでやらされるのか?」「どこまでやればいいのか?」と精神的に参ってしまうので、上司は部下の負荷状況を適切に把握しておかなければ、予期せぬ悲劇を引き起こしてしまうことになります。

②   納期交渉

“できる”社員も一般的な社員も、仕事が多く忙しい時には、依頼された内容と納期次第では、時間の不安を抱えてしまいます。安請負してしまうと後で叱責を受けることになるので、このような場合は、納期交渉をすることになります。上司も多少の時間のバッファーを見込んで依頼していることが多いので、通常、よほどの緊急案件でない限り、時間に関わる交渉幅は一定度あることが多く、うまく交渉できれば、その時点で時間に関わる不安は払拭されます。

しかし、上司が日常的に話しにくい雰囲気を作っていたり、高圧的である場合は、部下は納期交渉を躊躇し、悶々としてしまい、結果的に、時間に関わる不安を増幅させることになります。上司はこのリスクを視野に入れ、自分の日々の行動も部下が納期を守ることができない原因に大きな影響を与えてしまう可能性があることをきちんと認識する必要があります。

③   仕事の段取り力

部下が抱える時間の不安の根本原因は「仕事の段取り力」が不十分なことでしょう。「仕事の段取り力」とは「ある時間軸の中で(複数の)仕事を組み立てて完遂する力」です。仕事の目的と手段、仕事を遂行するうえで関わる相手、その相手の思考や行動傾向を見極めたうえで、ひとつひとつの作業段取りを考え、適切に優先づけすることができなければ、段取り良く仕事を完遂することは難しいのです。実際のところ、「仕事の段取り力」が十分でないため、仕事を「停滞」させ、あるいは、相手との仕事の授受において「手戻り(=やり直し)」を頻繁に起こしている人は少なくありません。このような人たちは、傍から見るといつも忙しそうに見えるのですが、計画とおりに仕事を完了することができないことが多く、時間に関わる“潜在的な”不安をいつも抱えているのが特徴です。

また、「仕事の段取り力」は、上司が高くて、部下は低い、と言い切ることはできません。組織の中のどの階層においても「仕事の段取り力」に問題を抱えている人はいます。上司も、立場やプライドは横に置いて自分自身の現状を正しく認識し、自他ともに、「仕事の段取り力」を向上させる必要があります。この努力こそが時間に関わる不安を軽減することに繋がるのです。

次回は、2つめの「不安」である、品質に関わる「不安」についてお話します。

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