経営とビジネスの現場で、日本人の「思考」と「行動」に変化を起こす!「マネジメント実務」に変化を起こす!

コラム

大声で感情的に怒らないための本質的な行動課題

世界で活躍する日本人リーダーの現場行動
~思考と行動をアップグレードする~

第51回
外国人社員と仕事をするとき、日本人の期待どおりに考え、行動してくれる状態を作ることは、大変難しいです。日本人のように同調し、あまり深く考えずに適合してくれる温順な外国人社員はほとんどいないのです。外国人社員に、期待していることや学んでもらいたいことを正しく理解してもらうには、日本人がその都度、適切な言葉で丁寧に、分かりやすく説明しなければいけません。
通常、外国人社員が「誤解」する大きな原因は、彼らの理解力にあるのではなく、彼らが日本人と同じバックグラウンドをもっていないことです。したがって、相手が日本人のときよりも行間を埋めて言葉数を多くし、より具体的・論理的に、丁寧に説明しなければ、外国人社員は日本人から期待されている内容を正しく理解することができないのです。
しかし、言葉数が少ないコミュニケーションに慣れている日本人は、特に新興国で日本語を使ってコミュニケーションする場合でも、たいてい本能的に「面倒くさい!」と感じてしまいます。「それではいけない!」と気持ちを切り替えて説明を始めると、今度は説明を重ねる過程で自分の「語彙(=ボキャブラリー)」を早々と使い果たしてしまい、説明に必要な「適切な表現」を見つけることができなくなってしまうのです。

◆「日本的感覚」の落とし穴
同じ失敗を繰り返す外国人社員を指導するとき、「言葉」や「適切な表現」が見つからないと無意識のうちに苦しくなり、イライラ感から、「こんなことも分からないのか!」「何度言ったら分かるんだ!」などの感情的な表現で語気を荒げてしまうことになります。そして、周囲に他の社員がいてもお構いなしに「叫んでしまう」のです。
日本の企業社会において「人前で大声で叱る」行動は、本人に「人前で叱られることで恥をかき、二度と恥をかきたくない気持ちにさせ」る一方、周囲に対しては「戒めや警告」を意味します。そして、こうした手法は過去、組織の中である程度受け入れられてきた経緯があります。この「日本的感覚」で叫んでしまう人は、「後で相手をフォローすればよい」と思っているのですが、実際には「感情的な人」というネガティブなレッテルを貼られてしまい、汚名返上は大変難しいのが実情です。

◆「目的」を見失わない
日本の企業社会では「集団」に立脚した行動原理が優先されます。そのため各社員には、「空気」や「状況」を優先して素直な感情や率直な意見を表現することを控え、周囲の大勢(たいせい)に同調、協調することが求められます。
一方、海外では「個人」に立脚した行動が優先され、自己表現、自己主張することが各社員の存在価値になります。したがって外国人は、日本人の想像をはるかに超えてプライドや面子(めんつ)、そして一人の人間としての「尊厳」を大切にするのです。この「尊厳」が人前で傷つけられることは、彼らにとって一大事なのです。
たしかに、場所を個室に移して1対1の環境を作れば、人は多少冷静になることができます。しかし、個室で指導するための「言葉」や「適切な表現」が見つからなければ、結局は叫んでしまうことになり、指導したい「内容」を相手に正しく理解してもらうという「目的」が達成できません。

◆「言葉」と「表現のバリエーション」を増やす
組織の中で、感じたことや考えたことを表現せず、「適切に呑み込む」ことが習慣になっている多くの日本人は、無意識のうちに「言葉」と「表現のバリエーション」を徐々に失ってしまいます。その結果、組織の中で皆が使い慣れている定型的な言葉や表現に偏ってしまうのです。
組織内の「空気」や「黙示的規範」によって自己表現が抑制されてしまいがちな日本人は、自分の意見を率直に表現する、あるいは論理的に愚痴る、議論する機会を、組織の外でできるだけ多く作ることが大切です。人前であろうと1対1の環境であろうと、「感情的」にならず、その場の「目的」を達成するには、「内容」を伝えるための「言葉」と「表現のバリエーション」を増やすことが、本質的な解決策なのです。

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