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コラム

異なる意見を感情的に拒否せず、正しく理解する方法

世界で活躍する日本人リーダーの現場行動
~思考と行動をアップグレードする~

第47回
異なる意見を感情的に拒否せず、正しく理解する方法

◆大企業で働く日本人は意見の対立を避けがち
一般的に日本人は同調し協調する行動を好むため、通常は会議などの場で他人と違う考えや意見をあまり表現しません。その結果、日本の組織では日常的に、異なる意見が“表だって”対立する頻度がかなり低くなります。
事実、終身雇用的慣行が一般化している大企業では、好むと好まざるとにかかわらず、人と人が「長く付き合う」「気を遣い合う」ことが日々の行動の大原則になります。そしてこの原則が、良好な人間関係を維持するための「対立を避ける」行動習慣を心理的に後押ししているともいえるのです。

◆「意見」対立の解決方法は、一方が「折れる」のではない
日本人同士の「意見」が対立した場合、対立しているのは「意見」なのに、人間関係を考えて「感情」の対立や縺れを避けることが優先されます。そして、どちらかが“状況”を見て「折れる」ことになるのです。上司と部下の「意見」が対立した場合、当然ながら“パワーバランス”として部下が「折れる」「我慢して呑み込む」ことの方が多くなります。
海外では、そもそも「各個人の意見は異なる」ことが当たり前であり、異なる意見が対立することは日常茶飯事です。さらに、海外には終身雇用的慣行がないので、外国人は「長い付き合い」や「気遣い」を前提に行動する必要もありません。つまり上司との関係においても、議論せずに部下が「折れる」ことは基本的に考えにくいのです。
そのため、日本企業の海外拠点で日本人上司と外国人部下の意見が対立するとき、日本人同士の場合に期待できる“パワーバランス”が機能する確率は自ずと低くなります。むしろ相手の主張や異なる意見を正面から受ける機会が日常的に増え、日本人上司のストレスとイライラは高まりがちです。その反動から、相手の意見を理解せずに自分の考えを押し付けることが増え、そのせいで外国人部下との人間関係が険悪になり、徐々に疎遠になってしまうことが実際によく起きているのです。

◆「異なる意見を最後まで聞きなさい」というアドバイスは効果がない
「異なる意見を最後まで聞きなさい」というアドバイスを受け、相手の話を最後まで我慢して聞こうと努力したが、途中で挫折した――このような経験を持つ人は少なからずいると思います。
通常、相手の話を聞いている最中に「そうじゃない!」と感じると、相手の言葉は「音」としては聞こえていながら、同時に「音」がフェードアウトしたらどうやって相手を説き伏せようかと考える脳がフル回転し始めます。つまり、相手の話を理解する脳が停止してしまうのです。このとき表情はポーカーフェース、強張った表情、イライラした表情、微笑みを装った表情――など人によりさまざまです。興味深いのは、相手の言葉の「音」がフェードアウトした途端、ほとんどの人が「あなたの言っていることは分かりますが……」という決まり文句を“緩衝材”として使ったうえで相手の話を全否定し、「でも、こうでしょ!」と言っていることです。相手の話を理解する脳が途中で停止しているので、相手の話の論理を理解できているはずがありません。つまり「異なる意見を最後まで“聞く”」行為だけでは、相手の意見を「正しく理解する」ことはほぼ不可能なのです。

◆「異なる意見を正しく理解する」ための方法
対話の中で相手の異なる考えや反対意見を感じたとき、目を閉じて腕を組むのではなく、ペンを握って相手が主張している内容をメモし、最後にその内容を「復唱」しながら相手と「確認」することが重要なのです。
意見が対立したとき、この「復唱」と「確認」が自分の「アウトプット」だと決めれば、異なる意見を聞いている最中に感情的になってはいられません。最後まで話を聞き、内容と論理を理解しなければ、「復唱」することは不可能だからです。
相手の考えや意見を「正しく理解する」ことは「議論の条件」です。会議で反対意見を伴う「議論」に慣れていない日本人にとっては、大きなチャレンジといえます。しかしこの行動を習得する過程で、外国人に対するストレスが減るだけでなく、自分の意見を相手に「正しく理解させる」ための論理的思考力と表現力が鍛えられることに気づかされるはずです。

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