経営とビジネスの現場で、日本人の「思考」と「行動」に変化を起こす!「マネジメント実務」に変化を起こす!

コラム

「中傷」を「自責」で解決する!

世界で活躍する日本人リーダーの現場行動

~思考と行動をアップグレードする~

第4回

「中傷」を「自責」で解決する!

 

組織の中の「中傷」は厄介

日本人でも外国人でも人を中傷することはありますが、人の悪口や陰口をいう行動は基本的に人間の性なので、このような行動を完全に消滅させることは至難の技です。ただ、このような行動が組織の中で数多く起きて続くことはよくありません。組織の中で人を中傷する行動が広がる原因としては、会社や組織の体制や不公平な評価に対する不満、モチベーションの低下、そして、仕事量の多さ少なさから生まれる不安、などが代表的です。これ以外にも、個人的な妬みやっかみ、興味本位、あるいは、政治的な駆け引きという高度なことも原因となりえます。

中傷の現象は、組織の中で人の中傷を発信する人(=扇動する人)がいて、それに乗る人(=加担する人)がいて、お互いに心の「傷」を共有し癒し合っていることなのです。しかし、この行動からは前向きな解決策が生まれることはまずありません。むしろ、組織の中にマイナスのエネルギーが溜まり、働く人の心が荒廃していくだけなのです。

むなしい努力・・・

組織の中で中傷が発覚するころにはすでに発信元(=扇動した人)がわかりにくくなっています。なぜなら、加担している人たちの心や行動がヒートアップし、場合によっては過激になり、結果的に発信元の初期の「温度」をはるかに上回っていることが多いからです。

このような状況になってからマネジメントが注意しようとしても、そのメッセージの対象となるターゲットは既に広く分散しているため、メッセージの効力は薄れてしまいます。あるいは、今ごろ気づいても遅いのでは?という具合に“見えない”心理的な逆襲を受けるだけでしょう。

また、マネジメントが真剣に“犯人”探しをすることもありますが、これも効力があまりありません。なぜなら、その時点では、“真犯人”の姿は薄れ、便乗した“犯人たち”で溢れているからです。結果、聞き込み調査で数多くの社員を“逮捕”せざるをえなくなり、“逮捕”の現実味が薄れてしまうのです。仮に、便乗した“犯人たち”が一致団結して真犯人を差し出したとしても、共犯を認めることになりますし、後日、真犯人を中心とするグループから仕返しを受けることさえあるでしょう。まさに、イタチごっこなのです。

そこで登場するのが、社内メールの監視です。これは「阻止」という点では一定度の効果はありますが、逆に、会社に対する警戒心や不信感などを社員に植えつけることになり、あまり健全ではありません。社内メールを監視し、中傷を一時的に阻止できたとしても、プライベートメールでの行為まで阻止することは難しいです。携帯メールも一般化している現在では、完全に中傷を阻止する方法はないと考えるのが妥当でしょう。

自責のマネジメントで事前の打ち手を!

「できる」リーダーは“火(=中傷)消し”だけに奔走せず、“火”が起きるそもそもの原因を解決するための行動をとります。いうのは簡単ですが、実際のところ、目の前で“火”を見たとき、人間の性や感情が障害となり、人はなかなか当たり前の行動がとれないものです。組織の中には、火に油を注ぐ人がいる場合すらあるのです。

リーダーが考えるべきことは、「なぜ、組織の中でこのような負のエネルギーや負のネットワークが蔓延しているのか?」に対する答えです。この自問自答は大変勇気ある行動といえます。なぜなら、自責を視野に入れた行動だからです。日本人でも外国人でも「できる」リーダーは自責の行動プロセスの中で答えを導きだし、その答えをもとに、組織的に事前の問題解決に取り組む行動習慣をもっているのです。中傷を生む3つの根本原因についてお話しましょう。

【原因1】 仕事が面白くない!

組織の求心力が低下している可能性が高いです。具体的には、組織の方向性やゴールが不明確なため、ひとりひとりの役割まで不明確になり、自分の仕事に意義、やりがいを感じない社員が増えていきます。一方で本来、社員を鼓舞して率先すべき各層のリーダーまでが行き先を見失い元気を失うことすらあります。この問題解決は、まず、リーダーからしっかりと方向感を打ち出し、メンバーと対話することが絶対条件となります。下が仕事に面白みを感じないのは上の行動に問題があると考えるのが適切なのです。現場の社員から、やってみたい!実現したい!頑張ります!という明るい「生の声」を聞くことができるような状態を創ることがリーダーの役割です。

【原因2】不満が多い!

どんな組織でも人が働いている限り不満はあります。不満が多くなりすぎると人の心は乱れ、「傷」の共有が始まるのです。その前に不満の「程度」を察知し手を打つことが重要です。人は、他人に自分の不満を話すとある程度スッキリするという、案外単純な心理特性を持ち備えています。不満の対象次第では、他人に話した後、自分で解決する行動をとることができる人もいますが、組織的なことに関する不満の場合は、その場で話して気持ちはスッキリしても根本的に不満を解消することができるわけではありません。従って、「不満をいえる場」「不満を聞く人」「不満を解決する方法」が必要になります。これら3つのことをいかにタイムリーに用意できるかどうかがリーダーの腕の見せ所です。

【原因3】仕事がヒマ!

私の現場経験上では、この原因が中傷という行動に繋がっている確率が最も高いと考えています。メールや直接会話をとおして人を中傷している人たちの多くは「ヒマな人」です。しかし、これは個人の問題として片づけることはできません。ヒマな状態をつくっているのはマネジメントだからです。仕事が減ると人は仕事をしているフリをしながら徐々に不要な仕事をつくりはじめます。あるいは、他人の仕事に浸食し始め、重複する仕事が増え、お互いにいがみあったり、正当化しあったりする行動が増えます。本質的には、自分の居場所を見失うことから様々な不安を抱き、気がつけば他人を攻撃して自分を守ろうという行動をとることになるのです。

特に、日本企業の海外拠点では、マネジメントに対する不信感や評価結果に対する不満はさることながら、日本人が現地人材の能力を見限ってしまうことにより仕事を抱えすぎてしまうこともよくあります。その結果、現地人材がヒマになり、「職」を失いたくないという心理が働き、お互いの足を引っ張り合うような行動をとることはよくあることなのです。

国内外を問わず、社員ひとりひとりが目的や目標に向かって本当に忙しく働いている職場では、人を中傷するような行動は起きない、ということをリーダーは肝に据え、自責型のマネジメントをしていくことが大切です。

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