経営とビジネスの現場で、日本人の「思考」と「行動」に変化を起こす!「マネジメント実務」に変化を起こす!

コラム

「個人力」を強化する

世界で活躍する日本人リーダーの現場行動
~思考と行動をアップグレードする~

第54回
日本人の持つ集団力はお家芸(=最も得意なこと)といえますが、世界一とはいえません。しかし仮に集団力を『協調力・同調力』と定義するならば、日本人の集団力は世界一でしょう。
かつて日本企業の集団力が世界市場を席巻した時代があります。バブル崩壊までの、いわゆる右肩上がりの時代です。バブル最盛期の80年代後半は、まさに「Japan As No.1」でした。経済に勢いがあったのは事実ですが、それ以上に、日本企業で働く日本人のメンタリティーと行動による集団力が、日本企業を“世界一”に導いたのです。
私はその集団力を「世界を驚かせた摩訶不思議な集団力」と呼んでいます。世界でも類稀な「定年まで給与が上がり続けることが前提の終身雇用」「年功序列」などの慣行、また「会社と社員は運命共同体」という思想をベースとした“新興宗教的”「安心感」が、とてつもないパワーをもつ不思議な集団力を生み出し、日本企業を“世界一”に押し上げたのです。
バブル崩壊後、多くの日本企業は失速し、約20年間、「輝く出口」を求めて迷走してきました。過去の成功は人々の記憶と心に深く残り続け、“集団力”という安定した基盤が崩れた今でもなお、「(あの時の)集団力で勝負できる」と考える人がいるのが現実です。が、この考え方では世界で戦うことは難しいです。

世界で戦う「集団力」に必要なこと
どんな組織でも集団で成果を追求する限り、集団力は必要です。では、世界で戦う「集団力」を持つために今、何が決定的に欠けているのでしょうか。
答えは「個人力」です。一人ひとりのレベルで「個人力」を強めることが求められています。そして強い「個人力」をベースとした「集団力」を、最大化できる「強いリーダー」を作る必要があるのです。

「コーディネーター」を求める日本人
終身雇用的慣行のある日本企業では、「空気」や「状況」が社員の思考と行動を支配する傾向が強いため、協調性や同調性の高い社員が多いです。また各社員が自分の考えや意見を「適切に呑み込み」、個人の押し出しを控えるため、個人間の競争が少なくなります。
このような組織ではチームのトップに、長期的な人間関係を前提とした相互の気遣い気配りを優先し、メンバーを平穏にまとめることができる「コーディネーター(=調整役)」が求められます。しかしメンバーの「個人力」がさほど高くないため、よほどの偶然性や希少性が伴わない限り、組織の「集団力」は世界で戦えるレベルになり得ません。

「リーダー」を求める外国人
他方、終身雇用的慣行がない外国企業では、社員が自分の市場価値を高めることを優先するため、独自性や主張性の高い尖った人材、つまり「個人力」が高い人材が多いです。このような組織はメンバー間の協調性や同調性が低いため、チームのトップが「コーディネーター(=調整役)」では力不足。“自己主張の嵐”が吹き荒れるため、メンバーの話に聞き入り、最大公約数的な意見をくみ取ることが大変難しいのです。
したがって「リーダー」が必要になります。リーダーは議論の場で、メンバーの影に隠れるのではなく、自分の考えを堂々と、分かりやすい言葉で明確に表現できなければいけません。また議論を論理的に運び、メンバーの理解と共感を得て判断する力が求められます。最後はリーダーが責任を持って決めるのです。
一方で、メンバーの反対意見や異なる意見を想定し、それを感情的に否定することなく議論の材料に加える「度量」も大切です。社員の中にはリーダーと橇が合わず組織を去る人もいますが、こうした組織で育った人は個人力が高いので、他の組織でも活躍することができます。
日本の企業社会では、「個人力」を “自己中心の代名詞”としてタブー視する傾向があります。しかし日本企業が今後、外国人社員の力を借りて世界で戦う「集団力」を持つためには、グローバルビジネスに関わる日本人社員が、それぞれの立場においてプロフェッショナルな知識・知恵・技術に裏付けられた思考力、行動力をベースとする「個人力」を強化することが重要だといえます。

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