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コラム

「外国人との時間」を大切にするために必要な感度と行動

世界で活躍する日本人リーダーの現場行動
~思考と行動をアップグレードする~

第45回
「外国人との時間」を大切にするために必要な感度と行動

◆日本と海外では「時間を守る行動習慣」がそもそも違う
日本の社会では、「時間を守らない人は信用が低い」という固定観念があります。そのため、日本人の間ではプライベートでも仕事でも、他人と約束した「時間(=物事を開始する時間)を守る」行動習慣が定着しています。約束に遅れそうになると、信用を失いたくない意識が働き、必ず相手に連絡を入れてお詫びをします。
海外ではどうでしょうか? そもそも、日本と同じような時間にかかわる固定観念はないといっても過言ではありません。日本と比べて交通機関が時間に正確でないことはもとより、家庭で親が子供に対して「始まり」の時間を守ることの大切さを優先して教育しているわけでもありません。そのため、外国人は「始まり」の時間に遅れても、自分の信用を失うリスク意識が低いだけでなく、相手の時間をムダにしてしまうというような罪悪感すら薄いのが実情です。

◆「始まりの時間」よりも「議論の質」「成果」にこだわる行動が必要
日本企業の海外拠点で、日本人駐在員が主催する会議の開始時間になっても出席予定の現地社員がその場にいないと、まず、日本人は条件反射的に「けしからん!」と感じます。そして、その現地社員に対して「時間にルーズな人」「自分勝手な人」「信用に欠ける人」といった印象を持ちます。
次に、開始時間を過ぎると日本人の表情が徐々に強張り、眉間にしわが寄り始め、イライラが始まります。その理由は、日本人にとって当たり前でないことが目の前で起きつつあるからです。その後、ほとんどの場合、遅れてきた現地社員を強面で睨み、きつい言葉で叱り、他の参加者の時間をムダにしたことについての謝罪を求めます。その結果、その場の雰囲気はものすごく凍りついてしまいます。このような「空気」になると、会議室の多くの人たちの脳の働きが停止し、その後しばらくの間、空白の時間が流れてしまうことになり、会議の「質」に影響が出てしまうのです。
多くの外国人は、日本人は「形」にこだわり過ぎて「内容」を軽視する傾向があると感じています。「会議の始まりの時間には厳しいけれど、なぜ議論の質や会議の成果にはあまりこだわらないのだろう?」という疑問があるのです。日本人は「終わりの時間」にはあまりこだわらないが、「始まりの時間を守ること」には大変厳格だというイメージが、外国人の間では定着しています。そして、外国人には、日本人は「時間を大切にする」感覚が薄いと映っているのです。

◆「共有する時間を有意義にする」感度と行動が必要
日本人にとって、「時間を大切にする」行動は、「約束した始まりの時間をお互いに守る」ことを優先します。しかし、外国人にとっては、「共有する時間をお互いに有意義なものにする」ことを優先するのです。つまり、一緒に過ごした時間の中で、「お互いの考えがよく理解できた」「率直な意見を交換することができた」「学びが多かった」「次にやるべきことがはっきりしてよかった」といったことをお互いに感じることができることを意味しているのです。
会議の中で対等で公平な議論が起きないのであれば、外国人にとって会議に参加する意味は薄れます。最初から日本人駐在員の間で結論が決まっていて、会議の場でそれに賛同を求められるか、儀式的に意見を求められるだけ、というやり方は、有意義な時間を過ごしたという感じ方とはほど遠いものです。意見を言っても毎回、反対・否定されるだけでは、意見を述べる気持ちが萎えてしまいます。また、何が決まったのかが不明なまま会議を終えてしまうと、それこそ消化不良となりモヤモヤ感が残ってしまいます。さらに、会議の場では何も決まっていないのに、再開の案内もなく、その後、気がつくと、日本人駐在員の間だけで結論が出されていたということであれば最悪です。
実際のところ、このようなことは海外拠点だけでなく、本社を中心としたクロスカントリーの電話会議、テレビ会議、相互の出張時の会議の場で、案外よく起きているのが現実なのです。

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